袖ケ浦在住の経営者が毎月発行している、社会の隙間にピリリとした味わい深いコラムが毎号楽しみな「毎月新聞」。Apps Journalでは、定期的に全文掲載させていただきます!(管理人より)
迷惑な人
妻と休日の一日を郊外の温泉施設で過ごした。ここは一大複合施設になっていて、大きなお風呂に露天風呂、サウナをはじめいろいろ工夫のお風呂があって楽しい上に、大きなレストランや、リラクゼーションルーム、マッサージやエステまで入っているので、一日ゆったりと過ごせる。
その中でもここは岩盤浴を目玉にしている。岩盤浴は大小の4つの部屋に分かれていて、香りが違ったり、照明の雰囲気が違ったりと、各部屋ごとに趣向が違う。それぞれ10人くらいが横になれるようになっているが、その日は連休の所為か若いカップルが多く混み合っている。
妻と私はやっと二人で入れる部屋を見つけて、間に他人を二人挟んで横になった。
さて、ゆっくりと居眠りをしようと思ったが、隣の若いカップルが何か小声でささやいてはクスクスを笑っている。暗い中でそっと頭を上げてみてみると男が女の足をマッサージしてやっている。それで痛いの、くすぐったいのとイチャイチャしているのである。
「馬鹿ップル」とはこのことだ、全く迷惑な話である。他の客も迷惑しているらしく、ときどき、腹が立ったようにいきなり立ち上がり出てゆく人もいる。
妻も、行儀の悪い若者にさぞかしイライラしているのだろうと思った。しかし、ここを出てしまうと、混み合っているので、次の部屋に空きがあるとも思えない。よほどこの若者に注意しようかと迷ったが、そのうち、ぽかぽかと岩盤の心地良さに眠りに落ちたらしい。
一頻り、眠って気持ちよく目覚めたときには、隣の迷惑なカップルも妻もいなくなっている。妻は満足して出て行ったのだろうと思いきや、そうではなかった。帰り際、ロビーで涼みながら妻は「あなたのイビキがすごくて、みんな逃げて行きました。私は離れていたので突っついてあげることも出来ず、それに、夫婦だと分ったら、どんなにか恥ずかしいからさっさと出ました」と言う。
外へ出ると、晩秋の夜風が嫌われ者に冷たい。湯冷めしそうだぜ「ブルッ」。
柿を剥く
料理は苦手である。包丁が苦手である。左利きの所為で、包丁を持つと、危なっかしいとか、怖くて見ていられないとか言われる。だからついつい包丁を敬遠してきた。時にはリンゴの皮くらい剥こうとやってみるが、慣れないから皮をむくと言うより、多角形に造形してしまう。
これでは大人げないと思い、一念発起してくだものを剥く練習をした。リンゴ、ナシなど時間はかかるが、何とか剥けるようになった。それを妻がたいそう誉めた。「上手、上手」と言うのですっかり自信が出来た。
知人から柿をいただいた。その柿を見るなり妻は、これは「大秋柿」よと言って大喜びした。早速私が剥いてあげようと包丁を取ったとき、妻は真顔で、「いいの、これは私が剥きます、せっかくの大秋柿だから」と言う。
私の包丁の「上手、上手」はまだ教育課程らしい。
旅先で
弘前の駅で電車を待った。初冬の間昼間に乗客は少ない。ホームに電車が入ってきて乗り込もうとすると、電車のドアが開かない。調整中か何かで待たせているのだろうと、ドアの前で立っていると、中から見知らぬ人が立ち上がってドアを開けてくれた。ドアは「開」ボタンを押さないと開かないのだ。
やれやれ知らなかった、お陰様で電車に乗れてホッとした。礼を言いながら座席に座ると今度は別の人がドアを閉めろと言う。開けたドアは自分でしめないと閉じない。大慌てで「閉」ボタンを押してドアを閉めた。よそ者を標榜したようで肩身が狭い。乗客は電車を降りるとき、最後の人が「閉」ボタンを押しながら下りてゆく。出来るだけドアを開放しないためだ。
走る電車の中で思った。よそ者が知らないのはドアの開け方ではなく、この地の寒さだろう。
血圧のはなし
健康診断を受けた。まあ健康な方で、いままで血圧が高いという指摘もなかったが、今回は高いと言う。時間をおいてもう一度測ったが、まだ高い。看護婦さんが「何か血圧が上がるようなことに心あたりは在りませんか」と言う。
心当たりはある。病院へ来るとき、高速道路でスピード違反で捕まった。ガラガラに空いた道を快適に走っているとき後ろから覆面パトカーに「ウウー」とやられた。それを言うと、看護婦さんはカルテの備考にスピード違反とメモした。内科医はそれを見て嘲笑気味に「罰金は」と聞くので、2万5千円と答えた。また血圧が上がった気がした。
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