事業を展開している経営者や技術者にとって、常に頭を悩ませているのが、新商品や新サービスの開発。
特に、既存の技術や商品があるために、「より良い商品」「改良品」を作る際のアイディアが出てこない、ということも多々あるのだとか。
もし新商品・新サービスの開発の壁にぶち当たってしまったら、トランジスタを生み出したショックレーの事例は参考になるかもしれません。
新時代を築く技術を生み出す勇気の法則
トランジスタの発明者であるウィリアム・ショックレー(1910-1989)は、ある日、上司であるマービン・ケリーから「広大なアメリカで、大陸の端にいる者同士がすぐ隣で話しているようによく聞こえる電話システムを開発してほしい」と指示を出されたそうです。
この指示の意味はよく分かりますが、実はこれだけでは、開発する者にとっては、やや具体性に欠ける面があります。
ところがこの上司は、続けて「……ひいては、既存の真空管ではもう駄目だ。全く新しい概念の増幅器を開発してくれ」と述べたのだとか。
ウィリアム・ショックレー(Wikipediaより)
ショックレーは、この「全く新しい概念の増幅器を開発してくれ」という指示がなければ、トランジスタは開発できなかったか、あるいはもっと時間がかかったであろう、と言っています。
当時の研究者としては超一流のショックレーに対して、「真空管の研究をするな」という指示は、人材を無駄にする可能性すらありました。しかし、上司であったマービン・ケリーには、①既存の技術を否定する勇気、②ショックレーの能力を見抜く眼力、そして③明確な開発コンセプトを指示するという、3つの点で、非凡さを示したのです。
問題の捉え方が開発の決め手となる
ショックレーは自伝で、「大陸の端にいる者同士がすぐ隣で話しているようによく聞こえる電話システムを開発しろ」とだけ言われていたら、自分は真空管の研究からスタートしたであろうと語っています。
優秀なショックレーでさえそのように考えるとなると、並みの技術者ならなおさら。
新しいものを創り出すときには、テーマ設定の良し悪しが、開発の成功を左右する決め手となります。良いテーマの中には、目標とする指針が示されています。「真空管は駄目、まったく新しい技術で」といった具合に。
新商品を生み出したいなら、一度、既存技術を否定してみては?
もし新商品や新サービスの開発の壁にぶち当たってしまったら、まずは一度、既存の商品やサービスを構成する主な要素を否定してみる、というのはいかがでしょうか。
「まったく新しい製法の生クリームで作ったショートケーキ」「まったく新しい製法のペーストで作ったカレー」とか、ね。
ちょっとだけ、ワクワクしてきませんか?