どんなに実際的で素晴らしい商品やサービスでも、いつかお客様はそれに慣れてしまいます。
そうすると、その便利さを前提としながら、もう一段高度な要求を主張するようになります。「もっと〇〇にならないか」と。
「陳腐(ちんぷ)」とは「ありふれていて、古くさくつまらないこと」なので、言い換えると、商品は必ず陳腐化してしまうということです。
では、こうしたユーザーの傾向をどうすればビジネスチャンスにすることができるのでしょうか。
商品の陳腐化を次のビジネスチャンスに繋げる3つのステップ
T型フォードは、1900年代前半にフォード社が開発した有名なクルマで、18年余りで1500万台も売り、クルマの大衆化に先鞭をつけた大ヒット商品になりました。
T型フォードでアメリカ人はクルマの便利さを満喫していたわけです。
しかし、便利さに慣れた大衆は、その便利さを前提としながら、もう一段高度な要求を主張するようになりました。「もっとスピードの出るクルマが欲しい」「もっとカッコ良いクルマが欲しい」というように。
ところがフォード社は「クルマは丈夫で安全なのが第一」というコンセプトを崩さず、お客様のニーズの変化を無視してしまったのです。
そこで登場したのが、GM社の「シボレー」です。GMの中興の祖と言われるアルフレッド・スローン社長が「スピードが出るカッコ良いクルマ」というコンセプトで開発したこの新しい商品は、GMのその後の成長の礎を築きました。
この例から、「お客様が飽きることによる、一段高い欲求が何かを知る」「お客様の欲求を開発コンセプトに落とし込む」「そのコンセプトを具現化する」という3つのステップが分かります。
商品の陳腐化は市場をひっくり返す力がある
先程の事例ですが、「シボレー」の登場で、T型フォードは売れなくなり、在庫の山と化してしまったそうです。それまで市場を独占していたクルマ業界に大きな変化があったということですね。
陳腐化とはすなわち
- お客様の飽きっぽい性格
- お客様の一段高い欲求の芽生え
- より高いレベルの代替技術の出現
- 一段高い機能を実現した改良品の出現
といった要因で生じる現象です。ユーザーの「飽き」と「欲求」に目を向けて改良品が登場すると、従来品は陳腐に見えてしまうのです。
「こっちの方がカッコいい」「こっちの方はここが凄い」というポイントがユーザーに周知されることで、購入動向が一気に変わり、それまで大衆にメジャーだった商品ですら一気に在庫になってしまう、ということも生じるわけですね。
どんなライバル商品でも陳腐化させてしまう創造的ビジネス脳
もし何かの商品やサービスを展開しているのであれば、この陳腐化の要因を当てはめて、他社に先んじて自社で新商品・新サービスを開発できます。
「より〇〇な商品が登場すれば、お客様は今の商品に飽きてしまう」という前提で新たに「一段高い欲求」に基づく開発コンセプトを定め、「より高いレベルの代替技術」を駆使して「一段高い機能や特徴を実現した改良商品」を生み出すというわけです。
逆に自社が後発で既にライバル社がいたとしても、創造的ビジネス脳を使った新規参入による「市場のどんでん返し」も、夢ではないかもしれませんね。
これこそが「創造的ビジネス脳」の醍醐味ですね。