我が家の台所のシンクにある蛇口は、レバーを上げると水が出て、下げると止ります。
時々食後の洗い物など手伝うときに思うのですが、洗い終わった食器を水切りのカゴに置くとき、手の甲でレバーを押し上げて水を止められたらズットいいのにと思っていました。つまりレバーを押し下げて水を出し、レバーを上げて止める式です。
それを妻に言うと、妻は私に一くだり話して聞かせました。「家の中でも水回りは昔から神聖で、荒神様が祭られているし、かまどには竃つ霊(へっつひ)と言う精霊がついている。この清浄な場所で、「押し下げて水が出る」では如何にも縁起が悪い。「跳ね上げる」と言う縁起を担いで家族の繁栄を祈る」のだそうです。
なるほど、伊達に30年も台所に立っていたわけではない。薀蓄を聞いて納得しました。
ところが先月、建築士の定期講習を受けました。その時の教科書に、「水道の蛇口はレバーを押し上げて水が出て、押し下げて止るものが良い」とありました。阪神淡路大震災の時の教訓で、物が落ちてきたとき、下げる=出る、では水は出っぱなしになり止めようがない。それから、上げて出るがスタンダードになったと知りました。
荒神様もへっつひの霊も関係なかったようです。しかしここは山の神いう通り、と言う事にしておきましょう。